作品紹介
駅の改札を出た直後、肩に触れられるような距離で声をかけられた。
「すみません、ちょっとお時間いいですか。カメラロールの写真、見せてもらう企画やってて」
五十代くらいの男だった。裏垢のおじさん、という感じがそのまま顔に出ている。詩織は一瞬で「変な人だ」と思った。電車を降りたばかりで疲れているし、話を聞く気はほとんどなかった。でも男は歩きながらも離れず、声のトーンは丁寧なのに執拗だった。
「一枚一万円で買い取るんです。変な写真じゃなくても大丈夫。自撮りとか猫とか、普通ので」
嘘くさい。完全に。でも詩織のカメラロールには、実際にそれくらいしかなかった。自分の顔の自撮りと、飼っている猫の写真。それ以外は授業のメモや友人とのご飯くらいで、いわゆる「見せられないもの」は入っていない。だから「別にいいか」と思って、少しだけ画面を傾けて見せた。
男はスクロールしながら小さく頷き、「これで十五万ですね」と言った。詩織が「え」と口を開く前に、先に五万円を渡してきた。新札が束になった封筒だった。
その場で受け取ってしまった。びっくりして、手が少し震えた。
「残りは後日。念のため簡単な契約書も持っていきます。連絡先だけ」
詩織は完全に相手のペースに持っていかれていた。断り切れなかったというより、断り方を見失った感じだった。連絡先を交換し、駅前で別れた。
帰り道、封筒の厚みがバッグの中で気になった。思わぬ大金に、少し嬉しかったのも事実だった。二十歳の大学生にとって五万円は小さくない。でも同時に、「この人、何がしたいんだろう」という違和感が残った。
数日後、指定された駅前のカフェ。
詩織が着くと、男はすでに奥の席に座っていた。テーブルの上には薄い封筒と、一枚の紙。前回と同じく、穏やかな笑顔だった。
「今日はこれで」
男は封筒を少し押し出し、契約書を詩織の前に置いた。詩織は紙を手に取ったが、ほとんど読んでいない。文字が細かいのもあって、視線を滑らせただけだった。個人鑑賞に限る、転売禁止、追加は任意——前回聞いた内容と同じようなことしか目に入らなかった。
「一応、本人確認だけ」
男が言った。
「学生証、見せてもらえますか」
詩織は顔を上げた。「それは……いらないんじゃないですか」
「契約なので。名前と顔が一致するかだけ確認したいんです。コピーは取りません」
詩織は首を横に振った。学生証を見知らぬ男に出すのは、さすがに抵抗があった。でも男は席を立たず、声のトーンも変えずに繰り返した。
「五万円お渡しした時点で、もう少し正式にしておきたいだけです。短時間で終わります」
周囲の客の話し声が聞こえるカフェの中で、詩織は長く拒み続けるのが面倒になってきた。バッグから学生証を取り出し、テーブルの上に置いた。男はそれを手に取り、写真と名前をじっと見た。数秒だったが、詩織には長く感じられた。
「紬川詩織さん。大学も確認できました」
男は学生証を静かに返した。詩織はすぐにバッグにしまった。
「では、こちらにサインをお願いします」
詩織は契約書の署名欄に名前を書いた。字が少し乱れた。書いた紙を男に渡すと、代わりに十万円の入った封筒を受け取った。厚さのある、しっかりした封筒だった。
「今日はこれで」
男はそう言って立ち上がった。詩織も席を立った。店を出るとき、男は「また連絡します」とだけ言って、反対方向へ歩き始めた。
詩織は駅に向かう道で、バッグの中の封筒の重みを感じた。十五万。最初の五万円と合わせて、想像以上の金額だった。嬉しくないわけではない。でも学生証を出した瞬間の、あのじっと見られた感じが、まだ指先に残っていた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
本作品の無断転載、再配布、転売、加工、二次利用は禁止いたします。
本作品は、各種利用規約・ガイドラインを遵守した内容で制作しています。
「すみません、ちょっとお時間いいですか。カメラロールの写真、見せてもらう企画やってて」
五十代くらいの男だった。裏垢のおじさん、という感じがそのまま顔に出ている。詩織は一瞬で「変な人だ」と思った。電車を降りたばかりで疲れているし、話を聞く気はほとんどなかった。でも男は歩きながらも離れず、声のトーンは丁寧なのに執拗だった。
「一枚一万円で買い取るんです。変な写真じゃなくても大丈夫。自撮りとか猫とか、普通ので」
嘘くさい。完全に。でも詩織のカメラロールには、実際にそれくらいしかなかった。自分の顔の自撮りと、飼っている猫の写真。それ以外は授業のメモや友人とのご飯くらいで、いわゆる「見せられないもの」は入っていない。だから「別にいいか」と思って、少しだけ画面を傾けて見せた。
男はスクロールしながら小さく頷き、「これで十五万ですね」と言った。詩織が「え」と口を開く前に、先に五万円を渡してきた。新札が束になった封筒だった。
その場で受け取ってしまった。びっくりして、手が少し震えた。
「残りは後日。念のため簡単な契約書も持っていきます。連絡先だけ」
詩織は完全に相手のペースに持っていかれていた。断り切れなかったというより、断り方を見失った感じだった。連絡先を交換し、駅前で別れた。
帰り道、封筒の厚みがバッグの中で気になった。思わぬ大金に、少し嬉しかったのも事実だった。二十歳の大学生にとって五万円は小さくない。でも同時に、「この人、何がしたいんだろう」という違和感が残った。
数日後、指定された駅前のカフェ。
詩織が着くと、男はすでに奥の席に座っていた。テーブルの上には薄い封筒と、一枚の紙。前回と同じく、穏やかな笑顔だった。
「今日はこれで」
男は封筒を少し押し出し、契約書を詩織の前に置いた。詩織は紙を手に取ったが、ほとんど読んでいない。文字が細かいのもあって、視線を滑らせただけだった。個人鑑賞に限る、転売禁止、追加は任意——前回聞いた内容と同じようなことしか目に入らなかった。
「一応、本人確認だけ」
男が言った。
「学生証、見せてもらえますか」
詩織は顔を上げた。「それは……いらないんじゃないですか」
「契約なので。名前と顔が一致するかだけ確認したいんです。コピーは取りません」
詩織は首を横に振った。学生証を見知らぬ男に出すのは、さすがに抵抗があった。でも男は席を立たず、声のトーンも変えずに繰り返した。
「五万円お渡しした時点で、もう少し正式にしておきたいだけです。短時間で終わります」
周囲の客の話し声が聞こえるカフェの中で、詩織は長く拒み続けるのが面倒になってきた。バッグから学生証を取り出し、テーブルの上に置いた。男はそれを手に取り、写真と名前をじっと見た。数秒だったが、詩織には長く感じられた。
「紬川詩織さん。大学も確認できました」
男は学生証を静かに返した。詩織はすぐにバッグにしまった。
「では、こちらにサインをお願いします」
詩織は契約書の署名欄に名前を書いた。字が少し乱れた。書いた紙を男に渡すと、代わりに十万円の入った封筒を受け取った。厚さのある、しっかりした封筒だった。
「今日はこれで」
男はそう言って立ち上がった。詩織も席を立った。店を出るとき、男は「また連絡します」とだけ言って、反対方向へ歩き始めた。
詩織は駅に向かう道で、バッグの中の封筒の重みを感じた。十五万。最初の五万円と合わせて、想像以上の金額だった。嬉しくないわけではない。でも学生証を出した瞬間の、あのじっと見られた感じが、まだ指先に残っていた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
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本作品は、各種利用規約・ガイドラインを遵守した内容で制作しています。