作品紹介
「今日ね、珍しく、最初から最後まで足元が気にならない一本があったの」
練習帰りに入ったカフェで、佳澄がカップを両手で包みながら言った。下ろした髪が頬にかかっていて、話すたびに耳へ掛け直している。
「足元が気にならない?」
「うん。いつもは、ここでちゃんと乗って、とか、次に間に合わせなきゃ、とか考えるんだけど。今日は一回だけ、曲に合わせて動いてたら終わってた」
「ああ、それ、ちょっとわかる」
俺が身を乗り出すと、佳澄もうれしそうに顔を上げた。
「そっちにもある?」
「ある。今日はコーナーでさ、妙に楽な周があったんだよ。タイムも悪くないのに、いつもより頑張ってる感じがしなくて」
「それ、もう一回やろうとすると、できなくならない?」
「まさにそれ。次の周、欲張って台無しにした」
佳澄が声を立てて笑った。
「一緒だ。私も『今の感じ!』って思った瞬間、わかんなくなる」
同じ氷の上にいても、俺と佳澄ではやっていることが随分違う。彼女の演技を見て、俺にはどうやって立っているのかさえわからない瞬間もある。
それでも、こういう話は妙に通じた。
「佳澄の演技ってさ、調子いいと、次に何するか知らなくても見てられるんだよな」
「何それ」
「説明が下手なのは認める」
「もうちょっと頑張って」
「こう……動きが途中で切れない感じ」
佳澄は少し考えてから、カップの縁へ目を落とした。
「それは、うれしい。そこ、ずっと言われてるから。ジャンプの前だけ別の人になるなって」
「俺でもわかるくらいには、よかったんだろ」
「じゃあ、今度いいときの動画見せる」
「悪いときのも見せてよ」
「それは有料」
「厳しいな」
そんなやり取りをしていると、補欠という自分の立場も、佳澄が気にしている六位という数字も、しばらく会話に出てこなかった。
佳澄はカップを置いて、ふと思い出したように目を上げた。
「あ、そう。この間の表彰式でね、うれしいことあったんだ」
「何?」
「スケート協会の理事の方とお話ししたんだけど。その方のお孫さん、私のファンらしいんだって」
「へえ、佳澄の?」
「そう。何、その意外そうな顔」
「いや、身近すぎて。ファンがいる選手とこうやってお茶飲んでるんだなと思って」
「何それ」
口ではそう言いながら、佳澄の頬は緩んでいた。
「私が出てると、わざわざ教えに来てくれるんですって。前のプログラムも好きで、動画を何回も見てくれてるらしくて」
「いいじゃん。ちゃんと覚えてもらえてるんだ」
「うん」
その返事が、やけに素直だった。
佳澄はストローの袋を指先で折りながら続けた。
「会場で声を掛けてもらうことはあるけど、そういう話を直接聞くのって、やっぱりうれしいね。私が知らないところでも見てくれてるんだなって」
「そりゃ、うれしいだろ」
「しかも、好きだって言ってくれたところが、私も気に入ってたところで」
そこから佳澄は、以前のプログラムの話を始めた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
本作品の無断転載、再配布、転売、加工、二次利用は禁止いたします。
本作品は、各種利用規約・ガイドラインを遵守した内容で制作しています。
練習帰りに入ったカフェで、佳澄がカップを両手で包みながら言った。下ろした髪が頬にかかっていて、話すたびに耳へ掛け直している。
「足元が気にならない?」
「うん。いつもは、ここでちゃんと乗って、とか、次に間に合わせなきゃ、とか考えるんだけど。今日は一回だけ、曲に合わせて動いてたら終わってた」
「ああ、それ、ちょっとわかる」
俺が身を乗り出すと、佳澄もうれしそうに顔を上げた。
「そっちにもある?」
「ある。今日はコーナーでさ、妙に楽な周があったんだよ。タイムも悪くないのに、いつもより頑張ってる感じがしなくて」
「それ、もう一回やろうとすると、できなくならない?」
「まさにそれ。次の周、欲張って台無しにした」
佳澄が声を立てて笑った。
「一緒だ。私も『今の感じ!』って思った瞬間、わかんなくなる」
同じ氷の上にいても、俺と佳澄ではやっていることが随分違う。彼女の演技を見て、俺にはどうやって立っているのかさえわからない瞬間もある。
それでも、こういう話は妙に通じた。
「佳澄の演技ってさ、調子いいと、次に何するか知らなくても見てられるんだよな」
「何それ」
「説明が下手なのは認める」
「もうちょっと頑張って」
「こう……動きが途中で切れない感じ」
佳澄は少し考えてから、カップの縁へ目を落とした。
「それは、うれしい。そこ、ずっと言われてるから。ジャンプの前だけ別の人になるなって」
「俺でもわかるくらいには、よかったんだろ」
「じゃあ、今度いいときの動画見せる」
「悪いときのも見せてよ」
「それは有料」
「厳しいな」
そんなやり取りをしていると、補欠という自分の立場も、佳澄が気にしている六位という数字も、しばらく会話に出てこなかった。
佳澄はカップを置いて、ふと思い出したように目を上げた。
「あ、そう。この間の表彰式でね、うれしいことあったんだ」
「何?」
「スケート協会の理事の方とお話ししたんだけど。その方のお孫さん、私のファンらしいんだって」
「へえ、佳澄の?」
「そう。何、その意外そうな顔」
「いや、身近すぎて。ファンがいる選手とこうやってお茶飲んでるんだなと思って」
「何それ」
口ではそう言いながら、佳澄の頬は緩んでいた。
「私が出てると、わざわざ教えに来てくれるんですって。前のプログラムも好きで、動画を何回も見てくれてるらしくて」
「いいじゃん。ちゃんと覚えてもらえてるんだ」
「うん」
その返事が、やけに素直だった。
佳澄はストローの袋を指先で折りながら続けた。
「会場で声を掛けてもらうことはあるけど、そういう話を直接聞くのって、やっぱりうれしいね。私が知らないところでも見てくれてるんだなって」
「そりゃ、うれしいだろ」
「しかも、好きだって言ってくれたところが、私も気に入ってたところで」
そこから佳澄は、以前のプログラムの話を始めた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
本作品の無断転載、再配布、転売、加工、二次利用は禁止いたします。
本作品は、各種利用規約・ガイドラインを遵守した内容で制作しています。