作品紹介
撮影当日、スタジオに入って最初に気づいたのは、男性スタッフの多さだった。
それでも、着替えや衣装の調整は数名の女性スタッフが担当すると説明され、佳澄は少し安心したようだった。
「わからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
衣装担当の女性に声を掛けられ、佳澄が丁寧に頭を下げる。俺は見学用の椅子に腰を下ろし、その様子を眺めていた。
ところが、カメラの前に立つと、佳澄の表情はすっかり硬くなった。
「もう少し気楽に。彼氏さんと話してるときみたいな感じで」
カメラマンにそう言われ、佳澄がこちらを見る。
俺が笑って頷くと、彼女も笑おうとした。けれど、口元に余計な力が入ったのが、離れていてもわかった。
「そうそう。じゃあ、肩を楽にして」
指示が増えるほど、佳澄は自分の姿勢を確かめるようになった。腕を動かしては止め、顔を傾けては戻す。
リンクではあれほど迷いなく動けるのに、ここでは手をどこへ置くかさえ決められないらしかった。
何度も撮り直し、ようやく最初の撮影が終わった。
「大丈夫。ちゃんといいのがありますよ」
モニターを見せられた佳澄が、ほっと息をつく。
俺も立ち上がりかけて、その向こうに見覚えのある男を見つけた。
会長の孫だった。
いつからいたのかわからなかった。スタッフの一人が飲み物を渡し、スポンサー側の見学者だと説明している。
男はモニターを覗き込み、満足そうに頷いていた。佳澄が気づいて会釈すると、少し身を乗り出して笑った。
俺は、何となく落ち着かなくなって座り直した。
そのとき、監督と呼ばれていた男が、手元の資料をめくった。
「じゃあ、次は水着を外すカットに進みましょう」
佳澄が動かなくなった。
「……え?」
聞き間違えたと思ったらしい。俺も同じだった。
監督が説明を繰り返しかけると、佳澄は慌てて首を振った。
「無理です。それは、できません」
さっきまでポーズに困っていたときとは違う声だった。
「そういう撮影だとは聞いていません」
「契約には含まれていますよ」
監督は資料から顔を上げた。
「スポンサーからも強く希望されている部分なので。ここを撮らないというわけには、ちょっと」
佳澄が俺を見た。
俺はすぐに立つべきだった。
けれど、スタッフの誰かが説明してくれるのではないかと、周囲を見てしまった。行き違いがあっただけで、話せば元の撮影に戻るのだと思いたかった。
「でも、水着がメインというお話で……」
「そのあたりも含めての企画です。もう準備もしていますから」
佳澄の言葉に、監督の声が重なった。
「一度、契約を確認させていただけませんか」
彼女は丁寧に言おうとしていた。断り方に問題があったのではないかと考えているように、言葉を選び直していた。
だが、返ってくるのは同じ説明だった。
契約。スポンサーの希望。すでに進んでいる準備。
佳澄の目が赤くなっていく。
俺の頭にも、報酬の金額が浮かんだ。会長の紹介だということも。ここで撮影を止めれば、佳澄が困るのではないかという考えまで浮かんだ。
その一瞬、自分が何をしているのかわからなくなった。
佳澄は、できないと言っている。
なのに俺まで、周囲を困らせずに済む方法を探していた。
衣装担当の女性が、ガウンを手に近づいた。
「いったん休憩にしませんか」
その声に、佳澄の肩が小さく揺れた。
俺はようやく椅子から立った。
「待ってください」
思ったより大きな声が出て、何人かがこちらを向いた。
「本人が断っています。一度、話を止めてもらえますか」
監督が何か言いかけたが、俺は佳澄のそばへ行った。
彼女は差し出されたガウンを受け取り、胸元で握っていた。
「……断っても、大丈夫かな」
俺にだけ聞こえる声だった。
「大丈夫。いったん外に出よう」
佳澄が頷くのを待ってから、一緒に控室へ向かった。
廊下に出ても、彼女はガウンを握ったままだった。
俺は謝ろうとした。
けれど、「ごめん」と言えば、佳澄が俺を気遣って何か答えそうで、口を閉じた。
俺がいいと思うと言ったとき、彼女は安心していた。
あの夜、仲間に自慢する場面を想像していたことを、俺はまだ彼女に話せずにいた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
二次利用は禁止です
それでも、着替えや衣装の調整は数名の女性スタッフが担当すると説明され、佳澄は少し安心したようだった。
「わからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
衣装担当の女性に声を掛けられ、佳澄が丁寧に頭を下げる。俺は見学用の椅子に腰を下ろし、その様子を眺めていた。
ところが、カメラの前に立つと、佳澄の表情はすっかり硬くなった。
「もう少し気楽に。彼氏さんと話してるときみたいな感じで」
カメラマンにそう言われ、佳澄がこちらを見る。
俺が笑って頷くと、彼女も笑おうとした。けれど、口元に余計な力が入ったのが、離れていてもわかった。
「そうそう。じゃあ、肩を楽にして」
指示が増えるほど、佳澄は自分の姿勢を確かめるようになった。腕を動かしては止め、顔を傾けては戻す。
リンクではあれほど迷いなく動けるのに、ここでは手をどこへ置くかさえ決められないらしかった。
何度も撮り直し、ようやく最初の撮影が終わった。
「大丈夫。ちゃんといいのがありますよ」
モニターを見せられた佳澄が、ほっと息をつく。
俺も立ち上がりかけて、その向こうに見覚えのある男を見つけた。
会長の孫だった。
いつからいたのかわからなかった。スタッフの一人が飲み物を渡し、スポンサー側の見学者だと説明している。
男はモニターを覗き込み、満足そうに頷いていた。佳澄が気づいて会釈すると、少し身を乗り出して笑った。
俺は、何となく落ち着かなくなって座り直した。
そのとき、監督と呼ばれていた男が、手元の資料をめくった。
「じゃあ、次は水着を外すカットに進みましょう」
佳澄が動かなくなった。
「……え?」
聞き間違えたと思ったらしい。俺も同じだった。
監督が説明を繰り返しかけると、佳澄は慌てて首を振った。
「無理です。それは、できません」
さっきまでポーズに困っていたときとは違う声だった。
「そういう撮影だとは聞いていません」
「契約には含まれていますよ」
監督は資料から顔を上げた。
「スポンサーからも強く希望されている部分なので。ここを撮らないというわけには、ちょっと」
佳澄が俺を見た。
俺はすぐに立つべきだった。
けれど、スタッフの誰かが説明してくれるのではないかと、周囲を見てしまった。行き違いがあっただけで、話せば元の撮影に戻るのだと思いたかった。
「でも、水着がメインというお話で……」
「そのあたりも含めての企画です。もう準備もしていますから」
佳澄の言葉に、監督の声が重なった。
「一度、契約を確認させていただけませんか」
彼女は丁寧に言おうとしていた。断り方に問題があったのではないかと考えているように、言葉を選び直していた。
だが、返ってくるのは同じ説明だった。
契約。スポンサーの希望。すでに進んでいる準備。
佳澄の目が赤くなっていく。
俺の頭にも、報酬の金額が浮かんだ。会長の紹介だということも。ここで撮影を止めれば、佳澄が困るのではないかという考えまで浮かんだ。
その一瞬、自分が何をしているのかわからなくなった。
佳澄は、できないと言っている。
なのに俺まで、周囲を困らせずに済む方法を探していた。
衣装担当の女性が、ガウンを手に近づいた。
「いったん休憩にしませんか」
その声に、佳澄の肩が小さく揺れた。
俺はようやく椅子から立った。
「待ってください」
思ったより大きな声が出て、何人かがこちらを向いた。
「本人が断っています。一度、話を止めてもらえますか」
監督が何か言いかけたが、俺は佳澄のそばへ行った。
彼女は差し出されたガウンを受け取り、胸元で握っていた。
「……断っても、大丈夫かな」
俺にだけ聞こえる声だった。
「大丈夫。いったん外に出よう」
佳澄が頷くのを待ってから、一緒に控室へ向かった。
廊下に出ても、彼女はガウンを握ったままだった。
俺は謝ろうとした。
けれど、「ごめん」と言えば、佳澄が俺を気遣って何か答えそうで、口を閉じた。
俺がいいと思うと言ったとき、彼女は安心していた。
あの夜、仲間に自慢する場面を想像していたことを、俺はまだ彼女に話せずにいた。
【作品について】
本作品は、AI技術を用いて制作した創作動画・画像作品です。
演出、動き、表情、描写などに一部不自然さを感じる場面がある場合がありますが、AI作品ならではの表現としてお楽しみいただければ幸いです。
登場する人物・設定はすべてフィクションです。
登場人物は全員18歳以上の成人として設定された架空のキャラクターであり、実在の人物・団体・施設・地域等とは一切関係ありません。
二次利用は禁止です